「日本人は貯金好き」ということを聞いたこともある人も多いのではないでしょうか。
日本の預貯金へ金利が歴史的に低い水準のはみんなご存知のとおりです。1974年の4.32%をピークに急激に下降し、2018年現在は0.001%になっています。これは100万円を貯金していても10年後に100円しか利息がつかないことになります。
参考:ゆうちょ銀行 金利一覧
こんな歴史的に低い水準にも関わらず、日本人の貯金熱がやまないのはなぜでしょうか。
そこで、この記事では・・・
- 日本人が貯金好きな理由
- 日本人の貯蓄の平均貯蓄額・貯蓄割合
- 貯金に関して、世界と日本を比べた考察
の3つについて書いていきます。
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日本人が貯金好きな理由
日本人が貯金好きな理由には3つの背景があります。
- 歴史的背景
- 戦後の政策
- メディアの影響
- バブルの影響
1.歴史的背景
日本は平安時代以降、「倹約」の思考がありました。初期は「服制」と言って、衣服に関するルールが設定され、不相応なぜいたくをすることが禁止されていました。
鎌倉時代の「御成敗式目」、室町時代の「建武式目」にもこの倹約に関することが盛り込まれることになります。
参考:式目
さらに江戸時代では、「倹約令」が発令され、幕府の財政が窮乏すると、再建目的のためにたびたび実施された。特に、「亨保の改革」、「寛政の改革」、「天保の改革」は有名。
儒教の影響もあり、日本では長く質素倹約が推奨されていた歴史があります。
参考:コトバンク 倹約令
このことから、日本人は元来質素倹約を強いられ、お金を使わないように教育されてきた事が推測できます。
2.戦時中の政策
第二次世界対戦敗北後である1946年11月に「通過安定対策本部」が中心となり、インフレ抑制を目的とした「救国貯蓄運動」が展開されました。
戦時中に戦費確保のために発行された国債を買った国民が換金しようとして、日銀は紙幣を大量に増刷しました。お金はあっても戦後で設備が壊れていたため、まともに物を生産することができずにインフレになったので、その対策として「救国貯蓄運動」が行われたのです。
しかし、3年後の1949年にドッジ・ラインの超均衡財政により、インフレは収束しました。ところが、その後の日本経済の復興・発展を目的に大蔵省・日銀・全国民が協力して貯蓄に励みました。
こうした政府主導による「貯金は美徳」は日本人全体に浸透して、世界中でも「日本人は貯蓄好き」というイメージが出来上がったのです。
参考:日本人と貯蓄
参考:財務省 貯蓄の指導奨励
3.メディアの影響
近代においてはメディアの影響が大きいと思います。
特に、2012年問題と呼ばれる、戦後1947年から1949年の間のベビーブーム世代が一斉に退職し、退職金や年金支払いが始まるため財政がさらに悪化するという問題は何度もメディアで取り上げられました。
財政を維持するには、消費税の増税を行わなくてはならない。年金の支給開始年齢を引き上げなくてはならない。年金が支払われなくなるかもしれないという不安。
若者の間では誰もがそういったニュースを聞いたことがあります。
リーマンショックによる大量のリストラや倒産もこのマインドに大きく影響しています。企業の「内部留保」も年々高まっており、経済悪化が急に来たときも倒産しないようにという風潮が出来ています。
それを象徴するかのように以下のようなグラフが公開されています。
これは、日本、アメリカ、中国における20~40代のビジネスパーソン900人を対象に「貯蓄に対する式調査」の結果です。
引用:日本人の8割が目的なく念のために貯蓄、4割は人生設計を考えたことがない
これを見ると明らかなのですが、日本人の自分の将来への期待度が突出して低く(33.3%)、中国(83.3%)やアメリカ(75.0%)に比べ、日本人が不安を抱えていることが浮き彫りになります。
4.バブルの影響
日本は1986年から1991年までバブルがおきました。
その間は、資産価格の上昇などによって、多くの人が、不動産投資などを行いました。
しかしバブル崩壊に伴い、大幅な資産金額下落が起こり、多くの人が投資で損をする結果となりました。
そのため、投資や借金を控え、貯金に励むという文化がさらに根付く結果になりました。
引用:ウィキペディア バブル
日経平均株価についても2018年になっても最高値の半額より少し上と言ったところで、バブル以降、投資が控えられかつ人々の貯金マインドを刺激してきたか容易に想像できます。
日本人の貯蓄の平均貯蓄額・貯蓄割合
ここからは具体的な数字を見ていきましょう。
貯蓄の平均・貯蓄額
参考:家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 平成30年調査結果
参考:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 平成30年調査結果
これを見ると、平均値よりも中央値の方が圧倒的に低く、格差が広がっていることが浮き彫りになります。
全年齢の貯蓄の平均値は950万円ですが、どこの数字にスポットライトをあてるかで印象が大幅に違ってきます。
貯蓄割合
こちらを見ると手取りから12%程度貯金にまわしていることになる。
手取りが20万円もらっていたら、2万4千円貯金できている計算に。
貯蓄に関して、世界と日本を比べた考察
これを見ると明らかだが、日本人の貯金の割合はアメリカやユーロ圏に比べて圧倒的に高い。
まとめ
✔日本人は様々な経験・歴史から貯金しやすい民族
✔日本人の貯蓄の平均値は950万円、12%を貯金にまわしている
✔諸外国に比べても貯金の割合は圧倒的に高い
このことから言っても、日本人は貯金が好きと結論づけてしまっていいと思います。
しかし、最近は積立NISAや投資などを国やメディアが推奨しているため、投資への割合は大きくなっていくでしょう。
しかしながら、歴史的・保守的な日本人の観点から考えると劇的に割合が上がることはしばらくないように思います。